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COSMOS 第8号 / 1996年12月発行

こちらのページは佐久合氣道通信「COSMOS」コスモス(1993年7月から2002年10月刊行)に掲載されていた遠藤師範からのメッセージを抜粋して再掲載しております。

合気道で得たものを活かす

合気道佐久道場長 遠藤征四郎


 九月中旬からフランス、リヒテンシュタイン、オーストリア、スペインと訪れ、今日本に帰ってほっとしている。スペインは初めてであったが、他の国は何度も訪問して親しい人たちも沢山できた。私の指導によるこれらの国での講習会は一年に一度であるため、出掛ける前から一年振りに会えるのが楽しみになっている。

 講習会参加の人たちは皆非常に熱心に稽古に取り組んでいる。初段クラスはもとより、参段四段クラスの人たちも、私の一挙手一投足を見逃すまいと目を見開いている。なぜ皆こんなに熱心に合気道をしているのであろうか。私はどこの講習会にでも、合気道が強くなるとはどういうことであるか、真に強い人間を目指すにはどのように合気道を稽古したらよいのか、と私自身の疑問を投げかける。そして合気道から得たものを道場外、日常生活、それぞれの人生に於いて活かせるようお願いしている。 幸い海外での講習会は年々参加者が増え、主催者と共に私も大変うれしく思っている。

 合気道開祖は合気道の修行者に「この世のありさまを始終よく眺め、また人々の話をよく聞き、良きところを自分のものに取り入れ、それを土台にし、自分の心の門を開いてゆかねばならない。例えば、天地の真象を良く見て、自らこの真象によって悟る。悟ったらすぐ行う。行ったらすぐ反省し、だんだん向上していただきたい。」と言っている。

 私はこの宇宙は調和と生かし合いで成り立っていると思っている。人間のみがこのことを忘れて傲慢に振る舞っている。開祖は宇宙の心と合気道の心は同じであり、宇宙の心とは「愛」であると言われて、合気道を学ぶことによってこの宇宙の心を体得してほしいと願っています。小さな自己の我がままが強くなることが合気道が強くなることではありません。私はだれにも心を開いて、尊厳ある自己を保ちながら、相手を尊重し、真に調和のとれた、生かし合いのできる稽古を目指して行きたい。(1996年12月)